パフューム ある人殺しの物語
原題:Perfume: The Story of a Murderer
制作年:2006年
制作国:ドイツ
監督:トム・ティクヴァ
出演:ベン・ウィショー
レイチェル・ハード=ウッド
アラン・リックマン
T:不思議な映画でしたね。
とにかく主人公が喋らないっていう。だから余計に…うぅ〜ん、何考えてるか分からない。
と言うか、主人公の感情ってほとんどなかったと思うのよね。でも、ひたすら追い求めてるのよね。だからもう本能だよあれって。
Y:感情がほとんど無いって、どこでそう感じたの?
T:殺人〜香水を作るまでがとても作業的で怖さが無かったからかなぁ。何て言ったらいいか分からないね。ただ、先の展開がずっと楽しみな映画だった。
印象に残っているのがね、バルディーニに
“匂いの保存方法を教えてくれ”
と弟子入りを頼み込むシーン。
グルヌイユが初めて自分の意志を喋ったことで、本能じゃない人間らしい部分が見えた。あと、ただ単に
「喋るんだ」
とも思った。あ、あと、最初のシーンで
「え、殺しちゃうの」
って驚いた。まぁ事故だと思うけど。
最後にも出てきたし、彼にとってのミューズだったんだろうね。
Y:…“あと”が多いな。
T:でさ、死刑台の上で涙を流したじゃない。あれは解釈が色々と分かれると思うんだけど、今はまだ掴みきれてないんだよね。
親に捨てられて誰からも愛されずに育ってきた・生きてきた中で、心の奥底では愛されることを求めてきたのかもしれないし、ただ単に自分の探究心を満足させる為に生きてきたのかもしれない。
Y:匂いってテーマがエロい。
T:そうだね。
これがありがちなストーリーなら…
様々な悪臭漂う中に生まれて、その時一瞬嗅いだ母の匂いを最初に殺した女性に見出して、それを常に感じていたいがために女性の匂いを追い求め、最終的に生まれ落ちた所へ帰って来る…。
匂いってのはやっぱり記憶だから。
って感じだけどそればっかりって訳じゃないんだよね。これなんじゃないかなっていう、彼の行動理由の決定打に欠ける。
最初に生まれた場所にそこまでこだわりを感じなかったのよ。だって、ハイライトになるのって最初に殺した女性でしょ?ある日突然何の縁も所縁もない女性の匂いに惹かれていくわけでしょ?その根底にある物が分からないのよね。
ただ単に、ある日男性の本能に目覚めただけなのか、さっき言った母の匂いの記憶説か…。
後者の方が筋は通るけれど、決定的にそうだと思える瞬間がなかった。
…あとさ、あいつ悪いヤツじゃないんだよ。
Y:めっちゃ殺してるじゃん。
T:そーぉなんだけど、絶対に許してはいけないことをしてるよ。そうなんだけど…何て表現したら良いか難しいな。
そもそもあの生活環境下で道徳心が育まれることが出来たのかってのが甚だ疑問だよね。
それにあの顔!最後捕まる時の顔が、捕まえに来た人たちがむしろ悪いことしてるって錯覚させられるほどの
“仕事邪魔された”顔
なの。
ま〜非常に興味深い映画ですね。
何度か観ると解釈が変わると思います。
Y:主人公が出ていなくても終始付きまとうド変態感。
映画のお供
ヴィタメールのマカダミア・ショコラ
ドリスが…
T:独立で頑張っていたからちょっと残念だなぁ。
映画も観たばっかりだったし…。
ブランドの個性が失わなければ良いな。
新しい挑戦の為だとは思うけど、ブランドってさ、オリジナルのデザイナーが居なくなった時点で一旦選択を迫られるじゃない?
Y:どんな?
T:要は、直近の事で言えば、デザインチームなのかデザイナーを立てるのか・ブランド哲学の継承に重きを置くのかブランドネームの継承に重きを置くのか。
Y:今回は傘下に入る訳で、引退じゃないでしょ?
T:あの人はビジネスマンでもあった訳だから…経営者というね、こう段々役を退いていく…段々段々自分の掌握出来る範囲が狭まっていくってことにならないと良いな…と。ま、そのブランドらしさに於いてね。
Y:ドリスのどんな所が好きなの?
T:どんな?難しいなぁ。…デザインの匙加減かな。
リアルクローズでありながら新鮮さを保っているところ
かな。
ミックマック
原題:Micmacs A Tire-larigot
制作年:2010年
制作国:フランス
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:ダニー・ブーン
アンドレ・デュソリエ
二コラ・マリエ
T:あの…ストーリーもそうだし、演技とか映像の雰囲気がコミカルで洒落ていて凄く好きな映画。
Y:…。
T:…。
Y:…………あれ?それだけ?す、好きなシーンとかは?
T:そうねぇ…好きなシーンは最後におじいさんが作った機械で服が踊っているシーン。
Y:え。まさかの最後?
T:えーそれが俺のイイ所じゃーん。
…あれっ、それっていい所なのか?
Y:何でそのシーンが好きなの?
T:羨ましいな と。出来れば俺が開発したかった。
Y:普通にくるくるまわってるだけじゃない…
T:おじいさんが機械仕掛けで作ったんだよ!! 凄くお洒落じゃない!!
分からないかなぁ??
Y:わからない。
あのぉ…もーぅちょっと何かないですかねぃ?
T:ん〜〜〜〜〜〜面白かったよ、凄く。でもあまり深く語る映画じゃないかな。
- どうやってあの復讐方法を思いついたのか
- どうしてあそこまでして復讐しようと思ったのか
- どうしてコミュニティがすんなり主人公を受け入れたのか
- そもそもあのコミュニティはどうやって成り立っているんだろうか
なーんて考え出したらキリがないけれど、それを考えるのは野暮だなって映画。
そうねぇ…ただちょっと細かいこと言うと、コメディだけど復讐劇って聞いていて、冒頭が撃たれるところから始まったじゃない?このままダークな雰囲気でちょっと切ない話になるんじゃないかって心がざわついたんだけど…
あのー…あのおじさん、コミュニティに連れて行ってくれたあのおじさんに救われた。
Y:DVDのジャケットからコメディ臭ダダ漏れだったよ。
T:でもあの冒頭からの展開に、孤独な男の復讐劇が俺の頭の中で繰り広げられていてちょっとそわそわしちゃった。
Y:冒頭と最後しか触れてない…。
T:い〜んだよそれで〜。
あ!この映画が俺の好き♡に触れた理由はね、
仲間が居て帰る家があったこと
だね!!
…なんか農耕民族みたいだな、つくづく。
とにかく雰囲気が好きで何度も見たくなる映画。
Y:サントラ欲しい。
この映画のお供
よくわからないけど美味しいハーブティー
鑑定士と顔のない依頼人
原題:La migliore offerta
制作年:2013年
制作国:イタリア
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルビア・フークス
T:ぁあー切ないね、これ。
嫌んなっちゃうね。はぁーーーーーーー。
今はそれしか言えない。可哀想すぎて…。
ー暫しトイレブレイク
T:あの歳で恋をしたおぢさんの可愛さといったらなかったのに…だからこそ余計にラストに向かって切なさがこう…出てくるね。
Y:初恋だよね?
T:人間に対してはそうだと思うよ。
裏でどういう計画が練られていたかは一切明かさずに終始主人公にフォーカスし続けたのが、主人公に集中させ感情移入しやすくさせていて
……んもぅ切なさ倍増。
とにかく、このバージル(主人公)の感情に引っ張られて行くね。後味悪いんだけど…。よくできた映画だよね。
Y:よくできたってどういう事?
T:目が離せないってことかな。
いい歳こいたおっさんをちょっとずつステップ踏んで女性にのめり込ませていく様子が上手く描かれていて、説得力があった。
最後の介護施設?に入ったシーンとプラハのシーンは時系列や何が真実か分からなかった。でもそれが良かった。色々な解釈の余地を残して終わるのはやっぱりオシャレ✨
Y:最後まで想像力が試される映画だった。
T:そうそう、クレアはバージルとセックスする必要は無かったんじゃない?もう充分彼の気は惹けていたし、対人恐怖症を理由に断れば彼はきっと手を出さなかったと思うし、それが無くてもあの展開に持っていけたと思う。
そう考えると、どこまでが計画でどこからがクレアの単独行動か分からない。謎が散りばめられていてとても味わい深かったよ。
Y:ベッドシーンが思いの外激しかった。
T:はいはい。
…バージルはきっと最後は介護施設に居たと思う。でも、プラハに本当に行ったのかもしれないし行ってないのかもしれない。
この映画をハッピーエンディングとするならば、
自分 “が” 待っている人がいる
ということかな。それが最初の彼とは一番違うところ。
Y:???
T:愛するひとがいる ということ。
あ、あとあのシーン重要だよね!手袋外してクレアの所に駆けつけるシーン。彼の気持ちの大きな変化を表していたと思う。今までになく取り乱していたしね。
俺、映画って説得力が大事だと思うのよ。
Y:つまり?
T:この映画って、ずっと何十年も女性を毛嫌いしていたおじさんがあの女の人にハマらなかったら成り立たないし、何度か彼女と決別するシーンがあったけど結局彼女の元へ戻るわけで……。
そこって、ご都合主義的な気はするけれど、
「ま、いいか」
と思わせてくれるか、そんなの気にさせずに夢中にさせてくれるってこと。
あとさ、重要なのが原題。
La migliore offerta
って言ってもイタリア語全然分からないんだけど、英題は
The Best Offer
これって邦題と違ってほぼ直訳だと思うのね。
これに大きな意味が込められているよ!!
…きっと。
このタイトルの方が色々と想像を膨らませることができる。
Y:へぇー。よくこんなに語れるね。
T:え、いや、俺テキトーだから。思っていること言っているだけだから間違っているかもしれないし…。
Y:ま、別に評論家じゃないし、人の感想に合ってるも間違ってるも無いと思うし、気にしてたらつまらないじゃぁーーーーん。
T:うん。じゃあ、まあ、この映画はそんな感じ。
この映画のお供 チコリコーヒー
はじめまして。
基本的にはT君と一緒に観たドラマや映画の感想をT君と語った記録。
ほぼ語った通りに書いているので、感想はストーリーに沿っておらず飛び飛び。あらすじは全く書いていないので、その映画を観ていないと「何のこっちゃさっぱり」という大変不親切な感じ。
ただ、あらすじは分からなくても結末は薄らぼんやり見えてしまうかも……。ご注意を。
また、感想の量に物凄くムラ有り(これはT君の興奮度合いや好みによるところ)。映画は新旧・劇場鑑賞/自宅鑑賞問わず気になった物を観ています。